本日は、経営承継円滑化法の金融支援措置についてお伝えします。
事業承継には、多額の資金が必要となる場合が多く発生します。
下記のような事由が発生している場合には、経営承継円滑化法において都道府県知事の認定を受けることにより金融支援措置を受けることが可能となります。
金融支援における3つの類型
経営承継円滑化法における金融支援は、以下の3つの類型に大きく分けて分類されています。
1.経営を承継した後に必要となる資金
①買い取り資金
【例】
・相続により非後継者に分散した自社株式/事業用資産等の買い戻しの資金
・親族外承継において、後継者が自社株式/事業用資産等を譲り受ける資金
②納税資金
【例】
・後継者が相続・贈与等により取得した自社株式/事業用資産等の多額の相続税・贈与税の支払い
③運転資金
【例】
・仕入先からの取引条件変更や取引先金融機関からの借入条件が厳しくなるために必要な資金
2.他の中小企業者の経営を承継する資金
これからM&Aにより他社の株式や事業用資産を買い取るための資金
3.現経営者の保証が付されている借入を借り換えるための資金
現経営者が法人の金融機関からの借入に対して経営者保証を提供しており、一定の財務要件を満たしている場合に、経営の承継までに同借入を経営者保証の提供が不要な借入に借り換えるために必要となる資金
経営承継円滑化法においては、中小企業者(非上場会社および個人事業主)並びに中小企業者(会社)の代表者個人および事業を営んでいない個人に対し、これらの3つの類型に対して下記の金融支援措置が講じられます。
3つの類型の支援措置
必要となる
資金の類型 |
支援の対象者 | 支援形態 | ||
融資 | 信用保証 | |||
1 | 経営を承継した後に必要となる資金 | 中小企業者 | 〇 | |
中小企業者の代表者
[会社] |
〇 | 〇 | ||
2 | これから他の中小企業者の経営を承継するにあたり必要となる資金
【2018年7月新設】
|
(これから他の中小企業者の経営を承継しようとする)
中小企業者 |
〇 | |
(これから他の中小企業者の経営を承継しようとする)
事業を営んでいない個人 |
〇 | 〇 | ||
3 | 認定日から経営の承継の日までの間に、現経営者の保証が付されている借入を借り換えるための資金(経営者保証は不要)
【2020年10月新設】 |
中小企業者
[会社] |
〇 |
ー中小企業庁 経営承継円滑化法「事業承継における融資・保証制度」から抜粋し引用ー
金融支援措置における特例(信用保証・融資)
支援措置の具体的な内容は下記の通りとなります。
1.中小企業信用保険法の特例(信用保証)
中小企業者※1または個人※2が金融機関から資金調達しやすくするために、信用保証協会の通常の保証枠(普通保険、無担保保険、特別小口保険)に別枠が設けられます。(会社の代表者および事業を営んでいない個人は、特例により通常の保証枠が設けられます)
ー中小企業庁 経営承継円滑化法「事業承継における融資・保証制度」から引用ー
※1 中小企業者には、会社および個人事業主が含まれます。
※2 類型に応じて、会社の代表者、事業を営んでいない個人を言います。
2.株式会社日本政策金融公庫法等の特例(融資)
認定を受けた中小企業の後継者は、日本政策金融公庫から特別利率で融資を受けることができます。例えば、融資限度額は7億2,000万円となり、融資利率は信用リスクに応じて所定の利率が適用されます。
1、2ともに金融機関や信用保証協会による審査を受ける必要がありますのでご注意ください。
まとめ
事業承継円滑化法における金融支援措置については、事業承継において、親族内承継から第三者承継まで幅広く活用できるように設計されています。また、後継者が事業承継をためらう要因となる経営者保証についても、所定の財務要件などを満たしていけば、借り換えにより不要とすることも可能です。
次回は、経営承継円滑化法に関する支援措置の4番目の「所在不明株主に関する会社法の特例」についてお伝えいたします。
広島における事業承継および経営革新に関するご相談は、さいきコンサルティングまでお気軽にお問い合わせください。
それでは、また。