事業承継特別保証制度のイメージ画像

本日も経営者保証の解除に向けた具体的な方法について確認していきます。

中小企業の事業承継を進めるため、後継者が経営者保証を負わずに事業承継ができる制度が整備されており、一定の条件を満たす場合に経営者保証を免除できる事業承継特別保証制度が創設されています。本日はこの制度について確認していきますます。

その前に、事業承継時の経営者保証解除に向けて、経営者保証ガイドラインの特則が同時期に策定・施行されました。まず、この特則について確認しましょう。

経営者保証ガイドラインの特則について

経営者保証ガイドラインの特則のイメージ画像

経営者保証のガイドラインが策定された約5年後の令和元年12月にガイドラインの特則が策定されています。この特則が策定された理由は、ガイドラインの策定により一定程度、無保証融資等の割合の増加、事業承継時の前経営者、後継者の双方から二重に保証を求める割合の低下が進んでいるものの、不十分であることから、経営者保証に依存しない融資がより一層進むように策定されたようです。この特則の目的は下記の通りです。

  • 原則として、前経営者・後継者双方から二重には保証を求めないこととする
  • 例外的に、二重に保証を求めることが真に必要な場合には、その理由や保証が適用されない場合の融資等について、金融機関が前経営者・後継者の双方に十分に説明し、理解を得ることとする
  • 後継者の経営者保証は慎重に判断する。ガイドラインが満たされていなくても総合的な判断で経営者保証を求めない対応を検討する
  • 前経営者の経営者保証は、令和2年4月からの改正民法により慎重に検討すること

※第三者保証の利用が制限されること

このガイドラインの特則が策定された中で新しい保証制度が創設されています。

事業承継特別保証制度について

全体像を説明する男性

この制度は、事業承継時の経営者保証解除に向けて創設された、新しい保証制度です。事業承継時に一定要件のもとで経営者保証を不要とする支援施策となります。

具体的な内容は下記の通りです。

  • 事業承継時に利用が可能(事業承継後にも利用ができる場合あり)
  • 経営者保証が不要
  • 利用には保証料が必要
  • 経営者保証コーディネーターによる支援・確認を受けた場合には保証料軽減措置もあり(最大でゼロ)※1
  • 既存のプロパー借入金(個人保証あり)についても本制度による借り換えも可能

※1保証協会における管理に必要な費用の一部(約0.2%)を除く

経営者保証コーディネーターとは

経営者保証コーディネーターとは、事業承継・引継ぎ支援センターに常駐し、支援を行う相談員です。具体的な支援内容は下記の通りです。

  • 解除要件となる「経営者保証に関するガイドライン」の充足状況の確認
  • 経営者保証解除に向けた中小企業と金融機関との目線合わせなどのサポート

事業承継特別保証制度の概要について

制度の概要のイメージ画像

それでは、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の概要について確認いたします。

 

 

対象法人

  • 事業承継計画を策定し、申し込み受付日から3年以内に事業承継を予定している法人
  • 令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人で事業承継から3年を経過していない法人

申し込み要件

次の要件を満たしていることが必要となります。

  • 資産超過である
  • 返済緩和中の借入金がない
  • EBITDA有利子負債倍率10倍以内である
  • 法人と経営者の分離がされていること

※EBITDA有利子負債倍率とは

実質的な借入金をキャッシュフローにより何年で返済できるのかを表す指標のことです。

(借入金・社債-現預金) ÷(営業利益+減価償却費)で算出されます。

保証限度額

2億8000万円(組合などの場合は4億8000万円)までとなります。

対象資金

事業資金が対象です。

既存のプロパー借入金(個人保証あり)の借り換えも可能です。
ただし、一定の期間内に事業承継を実施した法人に対しては、事業承継前の借入金に係る借換資金に限られます。

返済方法

一括返済または分割返済となります。

保証期間

  • 一括返済の場合 1年以内
  • 分割返済の場合 10年以内(据置期間は1年以内)

信用保証料率

0.45%~1.90%

※経営者保証コーディネーターによる確認を受けた場合は0.20%~1.15%までの軽減措置あり

担保

必要に応じて徴求されます。

保証人

徴求されません。

貸付金利

金融機関ごとの所定利率が適用されます。

申込方法

金融機関を経由して行われます。
(与信取引のある金融機関に限ります)

必要書類

信用保証協会所定の申込みに必要な資料のほか、次の資料が求められます。

  1. 事業承継計画書
  2. 財務要件等確認書
  3. 借換債務等確認書(既往借入金を借り換える場合)
  4. 他行借換依頼書兼確認書(既往借入金を借り換える場合で、申し込み金融機関以外からの借入金を含む場合)
  5. 事業承継時判断材料チェックシート(経営者保証コーディネーターによる確認を受け、上記0.20%~1.15%の信用保証料率の適用を受ける場合)

制度の活用方法について

活用方法のイメージ画像

まずは各都道府県または市町村にある信用保証協会へ問い合わせをします。各地の信用保証協会のサポートにより手続きを進めていきますが、金融機関の事前相談が必要な場合もあります。

問い合わせ先の指示に従い行っていきます。

経営者保証コーディネーターによる確認

経営者保証コーディネーターによる確認は、①経営者保証に関するガイドラインの充足状況の確認がされ、②事業承継時判断材料チェックシートに基づき、経営者保証解除の可否の判断に関する情報の整理・見える化が行われます。

その結果に基づき、今後の取り組みがアドバイスされます。

チェックシートがクリアされていれば、金融機関との目線合わせの支援が行われ、保証解除に向けて進めていきます。チェックシートがクリアできていない場合は、改善計画の策定がアドバイスされます。

事業承継特別保証制度の注意点

注意点を促すイメージ画像

事業承継特別保証制度は、経営者保証を不要とする事業承継を支援する保証制度ですが、必ずしも経営者保証が不要になるわけではありません。

まず、経営者保証の解除の可否は、最終的には金融機関の判断となりますので注意が必要です。今までのお伝えした要件が満たされていれば解除の可能性は高くなりますが、債務超過であったり、返済緩和中である場合などは適用されません。

また、保証限度額が設定されており、2億8,000万円までとなります。制度の対象となる資金も、事業承継時までに必要な事業資金であるといった制限もありますので、注意が必要です。

本日のまとめ

本日は事業承継時における事業承継特別保証制度について確認をしました。うまく活用すると経営者保証の解除ができますが、必要な要件もあり、事前の準備が必要となります。

まずは、事業承継にあたっての課題を見える化して、課題解決に向けての計画=事業承継計画の策定が大事になります。やはり早めに取り組むことが必要ではないでしょうか。

さいきコンサルティングでは事業承継に向けて総合的に伴走型で支援を行います。

広島における事業承継に関わるご相談は、お気軽にさいきコンサルティングまでお問い合わせください。

次回は、昨年12月に経営者保証改革プログラムが始動しましたので、改めて内容を確認していきます。

それでは、また。

この記事を書いた人
佐伯 隆
中小企業診断士/事業承継士
ソニーの国内販売会社に38年間勤め、営業・マーケティング・マネジメントに携わる。量販本部担当を12年するほか、ソニーショップの経営支援などを行う。2021年より「さいきコンサルティング」を開業。

さいきコンサルティングでは、事業承継に関わるご提案および解決に向けて伴走型で支援をしていきますが、弁護士、税理士などの独占業務など、業法に抵触する職務をすることはありません。